3-2 着くずれ

原因を知る

 着くずれの原因は、たいていの場合、着付けに問題があるか、着物を着てからの動作に問題があるかのどちらかです。
 着付けのとき、腰紐がしっかり締まっていなかったり、帯締めがゆるかったりすれば、裾が下がる、帯が落ちるといった着くずれの原因となります。体型に合った補整をきちんとしていない場合にも、着くずれが起こります。
 また、ふだんパンツなどの動きやすい服で生活しているため、着物を着たときも、つい無意識のうちに大胆な動作をしがちです。中でも、腕を上下に大きく動かすことは着くずれの最大の原因です。乱暴な立ち居振る舞いは慎むよう、充分注意しましょう。

直すポイント

 着物を着慣れている人でも、長時間着ていればどうしても着くずれてきます。でも、着くずれを直すポイントさえ知っていれば安心です。
 ほとんどの着くずれは 「おはしょり」と「身八つ口」の2か所で直すことができます。外出先で着物がくずれても、あわてず落ち着いて応急処置を。着くずれやすい部分別に、処置の仕方を覚えておきましょう。

  

原因

対処法

衿がゆるむ

吊り革につかまるなど大きく腕を動かしたり、長時間着物を着て動いていた。 左側の身八つ口から左手を入れて、下前の衿を下に引き、ゆるんだ分を胸紐にはさみこみます。上前の衿は、左手で衿元を押さえながら、右手で帯の下の衿先を静かに引き、おはしょりを整えます。

衿がかぶる

姿勢が悪く、肩を前に突き出してしまい、衣紋の抜きがなくなり衿が前にかぶった。 左右の身八つ口を持って、前身頃を両脇に引きます。次におはしょりの背縫いの部分を下に引いて衣紋を抜き、身八つ口のたるみを帯の間に入れこんで整えます。

半衿がかくれる

着付けのとき、着物の衿幅を広くとりすぎた。また、半衿の芯がないか、あってもやわらかすぎる。 着物の衿は場を内側におりこんで細くし、おはしょりの部分で衿先をひっぱって整えます。

長襦袢の後ろ衿が出る

着物と長襦袢の衿のくりが合っていないか、長襦袢の衿が着物の衿より長い。また、強く前かがみになった。 後ろの据を大きく上げ、姿勢をただし、長襦袢の背縫いを持って下に引きます。着物がたるむので、後ろのおはしょりを軽く下に引いて整えます。

袖口から長襦袢が出る

着物の袖つけの部分がつれている。また、着付けのとき、着物と長襦袢の脇線をきちんとそろえていない。 少しだけ出たときは、身八つ口で長襦袢を引きます。たくさん出てしまったら、長襦袢の袖幅の中央あたりをつまんで、安全ピンでとめます。

袂から長襦袢が出る

長襦袢の袖丈が着物より短い。また、袖を振って歩いている。 着物と長襦袢の袂の底をそろえて、内側を安全ピンでとめておきます。

上前が下がる

着付けのとき、衿先の位置で腰紐をきっちり締めていない。また、上前の裾を踏んでしまった。 右手でおはしょりの下から上前の衿先を持ち、突き上げるようにして、下がってきた分を腰紐の中に入れこみます。裾線がきれいに決まったら、おはしょりを整えます。

下前が下がる

着付けのとき、下前を正しく上げていなかったり、腰紐の締め方がゆるかった。
また、下前の裾を踏んでしまった。
 上前をまくり、下前の衿先を持って突き上げるように腰紐の中に入れこみます。
 裾線を決めて、上前とおはしょりを整えます。

据が広がる

着付けのとき、腰紐を正しい位置で締めていないか、締め方がゆるい。また、大股で歩いた。 かかとで着物の裾を踏み、おはしょりの下に手を入れて、両方の衿先を持ちます。腰紐の間から、下前の衿先を上前の衿先よりやや長めに引き上げ、裾つぼまりに整えます。

おはしょりがくずれる

着付けのとき、腰紐の締め方がゆるかった。また、立ったり座ったりが多かった。 おはしょりと上前の縫い棉を合わせて、出すぎた分を帯の下に入れます。帯と着物の間に両手を入れ、左右にしごくようにしてしわを脇に寄せ、平に整えます。

袖つけがゆるむ

腕の上け下げが激しかった。 帯の下から手を入れ、おはしょりのわき縫いを下に引きます。その分出すぎたおはしょりは、帯の下に始末します。

背中がゆるむ

椅子に腰掛けて前にかがんだり、腕の上げ下げが大きかった。 背のほうの身八つ口を両手で持って左右に引き、次に後ろのおはしょりを下に引いて、平らに整えます。

腰回りがふくらむ

長時間椅子に腰かけていたときになりやすい。 背中のおはしょりを上げて、腰紐の下からたるんだ分を引き上げます。その後おはしょりを下ろしてきれいに整えます。

お太鼓がつぶれる

車の座席や椅子の背もたれに寄りかかって、お太鼓がぺしゃんこになった。  帯山を持って左右にひっぱり、お太鼓の下線を押さえて、お太鼓の中から上線を突くようにして形を整えます。お太鼓全体をなでて、しわをとります。

お太鼓のたれがはね上がる

ウエストやヒップの補整が足りない。 小型のタオルや風呂敷などを折りたたんでお太鼓の裏側にはさみ、膨らみを持たせます。帯締めをしっかりと結び直します。

帯が下がる

着付けのとき、帯枕のガーゼをきっちりと結んでいなかったり、帯締めの締め方がゆるかった。  帯を上に上げ、潜物との間に小型タオルや風呂敷を小さく折りたたんではさみ、持ち上げます。帯締め・帯揚げはほどいて結び直します。

  

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