4-1 お手入れ

 

 きものは外出から帰ったら、すぐにお手入れしましょう。

(1) 脱ぐ時は

 着用の時と同じように、まず手を洗って清潔な手で着物が汚れないように衣裳敷き・風呂敷の上で脱ぐようにします。

(2) 風を通す

 脱いだきものは、体温や湿気をとるため、衣紋掛けや和服専用のハンガーなどに掛けて、直射日光の当たらない室内で1日陰干しを行いましょう。
 きものと一緒に帯、長襦袢、小物等も一緒に掛けておきます。

(3) ホコリを落とす

 まず、袖を裏返して、袂(たもと)の中の丸みにたまったホコリを取り除きます。そして、絹物は白い布(手ぬぐい等)、ウールは柔らかいブラシで、上から下に向かって全体をたたくようにホコリを落とします。刺繍や箔の部分はこすらないように気をつけて。布目にそってブラッシングします。

(4) シミ・汚れの点検

 きものの衿にファンデーションや汗の汚れ、袖や裾に泥やほこりなどの汚れがないか確認してから箪笥にしまいます。
 衿、袖口、前身ごろ、裾まわり、お尻などの部分は、汚れやすいので特に注意してチェックしてください。シミは時間がたてばたつほど落ちにくくなり変色します。なにより早く落とすことが肝心です。早いうちに処理すれば、汚れ部分が広がらず、きれいに落とせますが、そのままにしておくと、虫食いの原因となります。
 シミはベンジンを含ませた布でたたくようにして落としますが、素人では失敗しがちですから、専門業者に任せたほうが無難です。

(5) シワ

 汗をかくと背中や腰のシワが特に深くついてしまうものです。シワが付いたまま畳んでしまうと取れにくくなりますから、シワの目立つ部分には、木綿の当て布をあてて、アイロンを軽く押さえるようにして、手早くかけます。
 スチームアイロンは、着物が縮むことがあるので、使わないようにしましょう。
 また、金箔・絞り・刺繍の部分はさけて、軽くアイロンの重みをかける程度にします。

夏物

 ひどく汗をかいた場合は汗ぬきをします。怠りますと輪染みになりますますし、汗じみは時間がたつと黄ばんでくるので、なかなか厄介です。
 また、薄物は水にあうと縮みやすいものです。
 長時間座っていると、汗と熱で縮むことがあります。ぬれた布で汗を叩き出し、風干しをしてから、軽くアイロンを当てて伸ばすときれいに直ります。

 帯は脱ぎたての温もりが残っているうちにシワをたたいて伸ばし、裏面を表にして陰干しします。シミや汚れをチェックし、ビロードなどの布で全体を拭くか柔らかいブラシをかけておきます。

(6) お洗濯

1) 半襟
 絹の半襟は洗面器などの器に揮発油を入れて、その中に浸し柔らかい歯ブラシ等で布目に沿ってこすり、汚れを落としてます。
 合繊の場合は揮発油の代わりに洗剤で同じようにします。

2) 長襦袢や裾よけ等
 絹物の場合は専門店へ持って行った方が無難ですが合繊や綿、ガーゼの物ならば、洗濯機でネットに入れて手洗い機能を使ってお洗濯できます。干す時にはシワをしっかり伸ばしてください。

3) 足袋
 洗剤につけおきして、ブラシ等で布目に沿って洗います。それでも落ちない場合は、漂白剤を使います。合繊の場合にはネットに入れて洗濯機でOKです。
 湿り気のあるうちに足袋の底をしっかりと伸ばしてから、後で指先を丁寧にアイロンがけするときれいに仕上がります。

(7) シミ抜き(応急処置)

 きものはパールトン加工をしておくことをお勧めしますが、万一の場合には、慌てずに、水で薄くぬらしハンカチやお茶席用の懐紙等で、水分を吸い取ります。数回繰り返せば、ビールやジュース、お醤油などなら簡単に落ちます。
 大切な事は、絶対に拭いたりこすったりせずに、叩く事です。こすると生地の繊維に入り込んで 落ちにくくなります。
 シミの種類によってシミを落とす薬剤が違ってきますので、外出先でシミがついた場合は、すぐに水でハンカチを濡らし叩いてシミをぼかす程度にしておき、後で専門のシミ抜き屋に持っていくようにします。

シミの落とし方
 衿、袖口や裾等の汚れを自分で落とす場合は、良質で揮発性の高いベンジンを使います。ベンジンをガーゼ等に含ませ汚れの少ない方から多い方へじわじわとやさしく伸ばした後、周りをぼかすように叩きます。

その他の汚れ

お茶・コーヒー等 裏に乾いたタオルを当て、表から水で薄め水を含ませた白いハンカチで決してこすらないよう吸着させる様に取り、アルコールで拭きます。
ソース ぬるま湯で叩き、石鹸水で拭きます。
手をつけずにシミ抜きに出します。
お酒 水を含ませたタオルで叩きとり、ぬるま湯かアンモニア水でつまみ洗いします。
口紅 アルコールかベンジンで拭き、輪ジミを石鹸水で拭きます。
ファンデーション ベンジンで拭き、暖かい石鹸水で揉みます。
油類(お料理) シミの広がりを防ぐようにハンカチなどで汚れを押さえます。あまりいじらないことです。
マジックインキ・インク 手をつけずシミ抜きに出します。
泥はね・かび よく乾かしてからブラシをかけるか手でもんで落し、その後固く絞ったタオルで吸い取るようにします。

手に負えなくなったら無理しないで専門店に持っていきましょう。

(8) 保管

1) 防虫剤

 基本的には絹物は防虫剤は必要ありません。
 もし虫食いがあったとしたら、きものに点いたシミの部分が原因です。
 防虫剤を使う場合は、ピレストロイド系の成分の物(シートタイプのものが便利です、タンスにゴンやミセスロイド他)を使い、一つの引き出し(容器)に1種類が基本です。たとう紙の上に直接置かずにタンスの四隅に置くようにします。

2) たとう紙

 きもののたとう紙はきものの保管として手軽で機能的です。
 和紙のたとう紙はきものの湿気を吸い取ります。たとう紙が黄色く変色するのは、きもののかわりに湿気を吸い取っているためです。長くほっておくと、黄変(シミ)がきものに移ってしまうので、すぐにたとう紙を取り替えるようにします。高価なものを使うより、安いたとう紙で虫干しの度にとりかえたほうが、きものが長持ちします。
 きもの1枚にたとう紙1枚です。まとめ入れたりすると、きものにたたみじわが出来てしまいます。
 きものやさんや包装紙のお店、デパート等で一枚300円くらいで売っています。もし無い場合は、ウコンで染めた風呂敷、それもない場合は風呂敷を使います。

3) 虫干し

 きものは絹、木綿などの天然の繊維が使われていますから、空気にさらして、息をさせることが必要です。
 方法としては空気の乾燥した晴天の日を選んで、風通しの良い日陰に掛けて風に当てます。
 虫干しが面倒な人は、せめて年に一度はきものの引出しを全て開けて、たとう紙を広げ、たたんであるきものをちょっとたたみ直すだけでたとう紙の隅に溜まったガスが取れ、カビの発生を防ぐことができます。

4) 小物の保管

バック
 バックはかわいた柔らかい布でやさしくふき取りしまいます。
 白布や和紙等で包んでやるとさらに良いでしょう。

半衿
 化繊や交繊の物は、揉まずに軽く手洗いして、しぼらずに陰干し、裏からアイロンを掛けます。正絹は着るたびに洗うわけにはいきませんので、きものの衿と同様に処置しておきます。
 また収納時には、半衿はほとんどが白なので汚れないように他の小物とは分けておきます。

帯揚げ
 日常は手でしわを伸ばしながら巻いておきます。
 絞りの帯揚げはシワになりにくいのでしぼが潰れないように2つ畳にし、輪のほうから巻いておきます。
 無地綸子ものは1シーズンごとに薄めの中性洗剤液でふり洗いしますが、絞りは伸びる恐れがありますから、水につけたりアイロンを掛けたりしないほうがよいです。

帯締め
 手垢がつきやすいので、歯ブラシにガーゼをかぶせたものにベンジンを含ませ時々部分抜きにします。
 乱れた房は湯気にあて、櫛でとき、整えます。房を和紙できっちりとくるみ、房の部分を内側にして6つ折にして袋か箱にしまいます。

足袋
 白さが生命です。時間がたつと落ちにくいので、その日のうちにブラシで洗い、裏返して陰干しにした後アイロンをかけます。

草履
 陰干しして湿気を取ったあと、泥や埃を拭き取ります。革はクリーナーで汚れを落とします(布製にはクリーナーをつかってはいけません)。鼻緒の裏と鼻緒もしっかりと拭きましょう。

腰紐・伊達締め
 丈を二つ折りにし、左右に引っ張りながらシワを伸ばして巻き、、端から五角形になるように折り込んでゆきます。

4-2 たたみ方

本だたみ

付け下げ、色無地、小紋などほとんどの着物はこの方法でたたみます。

1. 衿が左にくるように着物を広げます。手前にある下前を脇の縫い目から折り、後身頃に重ねます。

2. 下前のおくみを縫い目にそって、手前に折り返します。衿肩まわりを平らに広げて、衿を内側に折り返します。

3. 2で折り返したおくみの上に、上前のおくみを重ね、衿をそろえます。衿先、裾もきちんと下前に重ねます。

4. 衿や裾がずれないように気をつけて、上前の脇の縫い目を下前の脇に重ね、両袖もそろえて重ねます。

5. 上前の袖を袖つけから折って、身頃に折り返します。

6. 折り目が衿先にかからないように注意して、身頃を袖に重ねるように、二つ折りにします。

7. 肩と折り返した裾を持って、くずさないように裏返します。

8. もう一方の袖を袖つけから身頃に折り返します。
「たとう」に包むときは衿を左にします。

夜着だたみ

 振袖や留袖、訪問着などに用いるたたみ方です。たたむときには刺しゅうや金銀箔、紋を保護するために、模様の部分に和紙をあてておきます。

1. 衿が左にくるように着物を広げます。後ろ身頃に身頃の幅と同じ大きさの和紙をあてます。手前にある下前を脇の縫い目から折り、後ろ身頃に重ねます。

2. 上前も同じように、脇の縫い目から折ります。そのとき、後ろ衿を身頃側に折り返してから、上前の衿と下前の衿を重ねます。紋の上に小さく切った薄紙をあて、裾模様の上にも和紙をあてておきます。

3. 下前の袖を折り、その上に上前の袖を重ねます。

4. 丈を二つ折りにします。衿先の少し下を折り返して、折り目には真綿をあてておきます。収納場所によっては、さらに二つ折りにします。

襦袢のたたみ方

1 衿肩あきを左にして長襦袢を広げ、上前が上になるように重ねます。

2 両手で手前の脇縫いを持って、脇縫いが身頃中央にくるように、1の点線の位置で内側に折ります。

3 下前の袖を外側に半分折り返します。このとき、袖口は手前側の身頃の折り目より、2センチほど内側になります。

4 上前も同様に脇縫いが身頃中央にくるように折り、袖を半分に折って重ねます。このときも袖口は、身頃の折り目より2センチほど内側になります。

5 丈を二つ折りします。衿は折らずに、そのままの位置で形を整えておきます。

帯のたたみ方

袋帯のたたみ方

名古屋帯のたたみ方

帯揚げ帯締めの仕舞い方

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