1 座る
上前の裾を右手で引きながら座れば裾は乱れません。
1) 立ち姿から、左足を一歩後ろに引いた姿勢で膝を折ります。
2) 上半身は真っすぐ伸ばしたまま、上体が前後左右に揺れないように注意し、ゆっくり沈むような気持で腰をおろしていきます。息を吐きながら折った二本の足の上にお尻を落とします。
3) 左膝を先に床の上につけ、つぎに、右膝を床につけて跪座の姿勢になります。
4) 上体が前かがみとならないように注意しながら、爪立てている足を、右足から静かにねかせてゆき、右足の親指の上に左足の親指を重ねます。
5) お尻を踵の上におろして、正座の姿勢をとります。
2 正座
正座をしたときの手は、両手の指先を内側に向け、ももの上に手のひらをつけて置きます。ひじは張らず脇につけるのが女性の座り方です。
それぞれのももの上に置いた手は、真っすぐに伸ばすのではなく、玉子を包むようにふくらませておくと、手も小さく、ほっそりと見えます。これを構えた手の置き方といいますが、改まった席に座るときは、この手の置き方を頭に入れておくと変に女っぽくならずにすみます。
重ね手は両手を真中に重ねて置く動作です。左手を上に置くのが一般的です。これは武士の作法からきていて、利き手である右手を下に隠すことによって、相手に対して二心ないことを示したのだといわれています。また利き手でない手のほうが日常的な運動量も少なく、指が筋ばっていないので美しく見えるからという人もいますが、次に何かをしなければならないお茶のとき、人の指示を仰ぎながらの待機の姿勢の場合は右手が上になり、すぐ手を動かせるような配慮をしています。重ね手は一般的ですが、もともとはくつろいだときのもの。正式には構えた手の置き方をします。
芝居や踊りでは、右ももの上に左手を上にして重ねている所作をみることが多いですが、腰元や内儀のしぐさで、ややへりくだったときの所作です。やわらかくて色っぽいのでふつうの人が行なっている場合もありますが、礼装などにはふさわしくありません。
1) 上体は、背すじをまっすぐにして基本姿勢と同様です。
2) 視線は、畳の長さ2枚分(3m60cm )くらい前方に。
3) 手は、指が開かないようにして、ももの上に自然にのせます。このとき、手の形は、親指と小指のあいだを狭ばめるような気持ちで、甲にまるみを持たせるようにします。
4) ひじは、あまり張らないで、胴体とひじのあいだに握り拳がひとつ入るくらいにあけます。
5) 膝と膝のあいだを、ぴたりとつけます。
6) 足は、右足の親指を下に、左足の親指を上にして、両足の親指を重ねます。
7) 身体がそり気味になりやすいので、自分の膝が短く見えるように、やや、前傾します。
3 立つ
姿勢を前傾にしたり、手をついたりしながら立ち上がるのは見た目も美しくありません。
正座の姿勢から立つ場合は、
1) 左足から両足首を静かに爪立て、お尻を上げます。このとき、上体が前かがみとならないよう注意します。
2) 右膝を立て、手は右足に右手、左足に左手をそえます。
3) そのまま頭、腰、お尻の順序で立ち上がります。立ち上がったときは、座るときの最初の姿勢、つまり、左足を半歩または一歩引いたときと同じ形になります。
4 座布団
挨拶が終わってから座布団に座ります。
最初に、座布団の下座(横)から、ひざまずいた姿勢で座布団の端に両膝を少しのせます。その両端の中ほどに三つ指かこぶしをついて、体を浮かせるようにすっとのるようにします。
座布団の中央に座り正面を向き、両袖とも広がらないように脇に寄せて、自然に下ろします。
立ち上がるときには、まず、腰を浮かせて両足のつま先を立て、かかとの上におしりを乗せます。座るときと反対に、つま先を座布団の横に下ろし、片膝ずつ下がって座布団の横に降ります。
5 横座り
横座りはくだけたときの姿勢ですが、どんなに足を投げ出していても、上半身を真っすぐに立てて、背すじをきちんと伸ばしておけば美しく見えます。
色っぽいものにするには、右尻を落とし、左足を伸ばした場合、上半身は足の方向、つまり左にかしげ そして目線も左から右に。アゴをやや突き出して会話を楽しむとやわらかく見えて、可愛い品の良さが 出ると教わりました。このとき、上前の重ねを深く着て、裾が膝の所から割れないようにくれぐれも注意しなければなりませんが、裾の乱れを計算に入れた裏地の色合わせも重要です。
6 椅子
きものはからだの右側で裾を合わせていますから、椅子にはからだの左側から入って座ると裾の乱れがありません。右側から入って座るとややもすれば上前がめくれて、裾が大きくあいてしまうこともあります。立つときには椅子の左に行くようにします。
椅子に座るときには、背もたれと帯の間にすき間をあけて少し浅めに腰かけます。深く腰かけると前が上がって見苦しく、浅すぎると不安定になるので気をつけます。振袖の長い袂は右袖を膝に広げ、その上に左袖を重ねます。
低い椅子に座る場合は、できるだけひじかけのあるほうを選んで、ひじかけにもたれるように腰掛けると背中が丸くならず楽です。せめて背すじだけは伸ばしておくことが大切です。
足は膝がしらを合わせ、どんな場合も爪さきを揃えること。少し引きかげんでそろえると美しく見えます。
椅子に座って決してしてはいけないのが、「足を組む」ということです。どうしても足を組まないと落ち着かない場合は、足首のほうで交差させるだけにとどめておきたいものです。裾が乱れるということは、長襦袢、蹴出しすべてあらわになり、そのうえ腰まわりにタルミができて、着くずれの原因になってしまいます。
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