日本の祭り10

 盆踊り

 盆踊りは、もっとも身近な仮装(女装)の機会です。
 お盆は盂蘭盆会という仏教行事が原点ですが、先祖供養、盆飾りなど実際には日本古来の民俗風習が色濃い行事です。古い盆踊りの歌詞は結構えげつないものも多く、大人は普段言えないことを歌に託して憂さを晴らし、若い男女は歌と踊りで恋の駆け引きをし、子供は無邪気に音頭を楽しむという、年に1度の機会でした。

 盆踊りには、伝統系の盆踊りと戦後に発展した民謡踊りという大きく分けて2つの流れがあります。

 伝統踊りのパターンは多様で地元の民俗風習と密接な関係があり、生演奏で踊りが行われます。
 盆踊りの起源は、定かではありませんが、ひとつは、鎌倉時代に現れた一遍上人の「踊り念仏」を起源とするもので、踊りによって得られる恍惚感によって、神仏と一体化しようという「踊り念仏」が民謡と結びつき、踊りによってお盆に帰ってきた祖霊を慰め楽しませようというのが、盆踊りの始まりだという説。ひとつは、日本には古来から旧7月15日に行われる「歌垣」という風習があり、これは若い男女が歌い踊りながら、結婚する相手を見付けるという、いわば合コンみたいな風習を起源とする説。また、平安時代の「風流踊り」という、ストリートダンスのパフォーマンスのような踊りを原点とする説などがあります。こういった風習が入り混じって、現在の盆踊りができてきたのだと思われます。
 盆踊りでは、仮装・変装(男装・女装)によって、地位・身分を越えて楽しむということが広くおこなわれ、時代を下るごとに娯楽的な要素が大きくなり、室町時代から明治時代まで何度も禁止令が出されているほどです。

 一方の民謡踊りは、戦後に発展したもので民謡レコードをかけながら街の公園や公民館などで踊るのが一般的です。

1)青森ねぶた

   青森市内 毎年8月2日〜8月7日
   青森市非公式ホームページ
   http://homepage.mac.com/nanshoji/aomori/

 東北の夏祭りとして有名な「ねぶた」(青森)、「ねぷた」(弘前)ですが、これらももともと七夕の行事です。
 旧暦では七夕からお盆までは約1週間で、七夕は、お盆という「祭り」シーズンに先立つ「禊ぎ」(みそぎ)の行事として、「お盆のはじまり」という感覚が強かったようです。東北地方各地では「ねむりながし」、栃木県足利地方では「ねぶとながし」ともいいます。夏場に人々を襲う睡魔を、音の似かよった「ねむの木」に託し、川に流して送り出すというみそぎの行事です。
 ねぶたでは踊り子を、ハネトつまり跳ねる人と書いてハネトと呼びます。このハネトの衣装の基本は、花笠をかぶり、お腰(腰巻き)をつけた女装の浴衣姿です。
 また、バケトといって、ねぶた最前列で仮装をして、露払いのような役目をする男性がいます。かつては、なじみの芸者から派手な長襦袢を借りて女装し、「伊達」や「粋」を売り物にしたバケトも多かったようです。

2)西馬音内(にしもない)盆踊り

   秋田県雄勝郡羽後町西馬音内本町(雨天の場合は、総合体育館)
   毎年8月16〜18日
   羽後町役場ホームページ
   http://www.ugomachi.com/e_ugo/index.html

 西馬音内の盆踊りは、豊年祈願や盆供養の為に始められて、700年の歴史を持つお祭りです。
 亡人を表すといわれる彦三頭巾、或いは編み笠を深くかぶって、顔を隠した女性及び女装の踊り手が誠に優雅に舞い歩きます。
 西馬音内盆踊り特有の踊りの衣装を「端縫い衣装」と言い、4〜5種の絹布を端縫い(パッチワーク)したものです。 帯は渋好みのものを御殿女中風に結ぶのが普通です。優雅で流れるような上方風の美しい踊りと、対照的に賑やかで土着の香りのする野性的な囃子が特徴です。しなやかな手の動きは特にセクシーで、大正年間に「風俗を乱すもの」として弾圧されたほどの魅力があります。国の重要無形文化財に指定されています。

3)徳山の盆踊り(ヒーヤイ踊り)

   静岡県榛原郡川根本町徳山 徳山浅間神社 毎年8月15日
   川根本町役場ホームページ
   http://www.town.kawanehon.shizuoka.jp/
http://www.kawanecha.ecnet.jp/sub5.html

 毎年盂蘭盆の8月15日に浅間神社に奉納される五穀豊穣を祈る踊りで、昔は男性が女装して踊っていたものですが、現在では小・中・高校生の女の子たちが伝えています。
 神社の境内にある三間四方の舞台の上で、山の神様に向かって、二列横隊で踊られます。浴衣地の振袖に、帯は短くだらりに結んだ衣装です。
 盆踊りは、「鹿ん舞」「ヒーヤイ」「狂言」の3つから成り立っています。
 鹿ん舞は、農作物を荒らす鹿を払い、豊作を祈願しつつ、鹿の張子の頭を被り、鉦、太鼓、笛などに合わせて舞います。ヒーヤイ踊りは巫女舞に近く、歌舞伎に通ずる踊りです。狂言は、台本(一番古いもので宝暦9年卯七月とある)に残される演目は能狂言風と地狂言風に分けられ、いずれも古い狂言の姿を伝えています。この形態は古歌舞伎踊りの初期形態を伝承し、動物仮装が添えられ、地域性にも富んでいるもので、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

4)丹土(たんど)はねそ踊り

   兵庫県美方郡新温泉町丹土 8月14日(火)〜16日(木)
   兵庫県立歴史博物館ホームページ/兵庫歴史ステーション/兵庫の祭りと芸能/採りもの
http://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/historystation/festival/index.html   

 別名「芸おどり」とよばれる桃山時代から伝わるもので、戦国時代に、歌舞伎音曲が流行し、その中に剣術に取り入れ供養のために仏前に向かって踊ったのが始まりとされています。5種類の踊りがあり、踊り手は二人、時としては三人が一組となり、男装、女装のいでたちで、その女役はかっては男子の女形によって演じられていました。
 棒・懐剣・脇差・なぎなた等を手にし、太鼓と囃しに合わせて所作事を演ずるもので、踊り手の多い時は幾組もが円陣を作って演じます。その型の由来は歌舞伎で、顔の向け方、足の踏み万にも直線的なきめてがあります。県の無形文化財に指定されています。

5)大宮踊

   岡山県真庭市蒜山富山根301-1 8月13日〜19日
   真庭市八束地域ホームページ
   http://www.village-yatsuka.com/

 大宮踊は、盆の期間、岡山県北部の蒜山高原山麓の旧八束村・川上村内の各所の社寺、お堂などで日を替えて踊られ、その中でも15日の夜、福田神社(別名大宮さん)の踊りが一番盛大なので大宮踊と呼ばれています。
 これらの踊り場の多くは板張り床のある屋内で、中央上方に大灯籠を吊し、その下に踊り子が輪を作り、音頭にあわせ円陣で踊るもので、輪の中に音頭取りと太鼓叩きがいて、踊り手は、音頭(歌)のゆるやかなテンポにあわせて、下駄で床を踏みながら悠長に踊ります。その手振りや所作などの演技法の珍しさ、男の女装、女の男装、滑稽な道化の登場など、民俗的な芸能の面白など稀な価値をもつものとして、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

6)対馬美津島の盆踊

   長崎県対馬市美津島町
   長崎県教育委員会ホームページ/長崎県の文化財/対馬市
   http://www.pref.nagasaki.jp/bunkaDB/index.html

 対馬には昔から盂蘭盆会(旧7月14日〜15日)を中心に各集落ごとに盆踊りの行事が伝承されています。これは各集落にほぼ共通した行事で、社寺や家々の庭先などで約8〜10名がおもに縦二列の隊型で盆踊歌と太鼓、笛、鉦の囃子に合わせて踊るもので、踊り手は男に限られています。踊りの番数は多く、はじめに祝言踊を、その後にほかの踊りを続けます。扇、太刀、長刀、鎌、棒を持って女装して踊ります。

    

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