(石竹色)

杜子春傳

李 復言 撰

 明治書院 新釈漢文大系「唐代伝奇」(1971)より

 日本では畜生界に落ちた両親を見て禁を破って声を出してしまうお話として、芥川龍之介の「杜子春」でおなじみですが、原典では女性への生まれ変わり物語になっています。原典の方では、地獄の責め苦をクリアして、女性に生まれ変わって修行を続けていくのです。この「唐代伝奇」には、この他にも禅問答の公案で有名な「離魂倩娘」など面白いお話がたくさんありますよ。

(あらすじ)

 杜子春は、放蕩者で、親族にもよせつけられず、飢寒にあえいでいた。ある冬の夕暮、長安は東市の西門で歎息していると、一人の老人が現われ、三百万の銭を子春にくれた。しかし相変わらずのふしだらな生活、一、二年もせぬうちに、また無一文になってしまった。市門で長歎息していると、またもや先の老人が子春の手を握って、救ってやろうと言う。今度は一千万をもらった。今度こそはと発憤していたが、いざ銭が手にはいってみると、またまた使い果たして、もとの木阿弥になってしまった。そして、また老人に出会った。老人は、恥じて逃げようとする子春の袖をおさえて、三千万をくれ、これでも駄目ならお前の貧乏は救いようがないと言うのだった。子春はこの老人の恩義に感じ、この金でこの世の事はすべてつぐない、後の自分は老人の命に従うべく、翌年の中元に老子廟に再会を約した。事をすませ、期日に及んで行くと、華山の雲台峯へと連れてゆかれ、仙人修行の身となった。老人は、実は道士で、白石三丸と酒一杯を子春に飲ませ、堂内の西壁に一枚の虎皮を敷いて東向きに坐らせ、「いかなることがあっても決してロをきいてはならぬ」と戒めた。道士が去ると、悪鬼・夜叉・猛獣や地獄などが現われ、ありとあらゆる責め苦を受け、はては彼の妻まで一寸刻みにされ、夫に姓名を名のることを哀願するのであったが、子春はどうしても口をわらなかった。
 そこで閻魔大王は、これは陰賊であるとして、女に生まれ変わらせた。生まれおちると病気ばかりで、一日として鍼・灸・医・薬などの世話にならぬ日とてなく、火に落ちたりもしたが、声を出さない。成長すると、容色並ぶ者なく、同郷の進士廬珪なる者にもらわれ、一男を生んだ。夫がその子を抱いて話しかけても、どうしても口をきかない。廬は、夫を卑しめて口をきかぬのかと大いに怒って、子供の脚をもって石の上にその頭を叩きつけ、鮮血が散った。ここに及んで、子春の心に愛が生じ、思わず「ああ」と叫んだ。
 その声が終わらぬうちに、子春はもとの場所に坐っており、道士もその前にいるのに気がついた。道士は嘆息して 「わしにそむきおった」と言い、「お前は喜・怒・哀・懼・悪・欲は全部忘れることができたが、愛だけを超越することができなんだ。お前が、ああという声をあげなければ、わしの仙薬も完成したものを。お前はやっばり俗世の人じゃ。しっかりやれよ」と言って帰すのであった。子春は誓約を破ったことを恥じ、過ちをわびようと再び雲台峯に登ったが、もはやそこには人のありかはなかった。


赤文字部分の読み下し文です)

 獄卒(ごくそつ)は罪を受け畢(をは)れるを告ぐ。
 王日(わういは)く、此(こ)の人は陰賊(いんぞく)なれば、合 (まさ) に男と作(な)すことを得(う)べからず。宜(よろ)しく女人(によにん)と作(なし)、配(はい)して宋州單父県丞(そうしうぜんぽけんじょう)の王勸(わうくわん)の家に生まれしむべし、と。
 生れて多病、針灸・薬醫(やくい)、略(ほぼ)停日(ていじつ)無し。亦(また)嘗(つね)に火に墜(お)ち牀(しやう)より堕(お)ち、痛苦齋(ひと)しからざるも、終(つひ)に撃(こゑ)を失(しつ)せず。
 俄(にはか)にして長大(ちやうだい)に、容色(ようしよく)は絶代(ぜつだい)なれど も、口に撃(こゑ)無し。其の家目(もく)して唖女(あぢょ)と為す。親戚の狎(な)るる者、之を侮(あなど)ること萬端(ばんたん)なるも、終(つひ)に對(こた)ふること能(あた)はず。
 同郷に進士(しんし)の廬珪(ろけい)といふ者有り。其(そ)の容(かたち)を聞きて之を慕ひ、媒氏(ばいし)に因(よ)りて求む。 其の家は唖(あ)なるを以(もつ)て之を辞(じ)す。廬(ろ)日(いは)く、苟(いやし)くも妻と為りて賢(けん) ならば、何(なん)ぞ言(げん)を用(もち)ひん。亦(また)以(もつ)て長舌(ちやうぜつ)の婦(ふ)を戒(いまし)むるに足(た)る、と。 乃(すなは)ち之(これ)を許す。廬生(ろせい)は六禮(りくれい)を備へ、 親迎(しんげい)して妻と為す。
  数年、 恩情(おんじやう)甚(はなはだ)篤(あつ)し。一男(いちだん)を生みしに、 僅(わづか)に二歳にして、聡慧(そうけい)敵無(てきな) し。廬は兒(こ)を抱(いだ)き之(これ)と言へども、應(おう)ぜず。多方(たはう)にして之を引けども、終(つひ)に辞(じ)無し。廬は大いに怒りて日く、昔賈太夫(かたいふ)の妻は、其の夫を鄙(いや)しみて、纔(わづ)かも笑はず。然(しか)れども其の雉(きじ)を射(い)たるを觀(み)て、尚(な)ほ其の憾(うらみ)を釋(と)けり。今吾(われ)は陋(ろう)にして賈(か)に及(およ)ばざれども、文藝(ぷんげい)は徒(ただ)に雉(きじ)を射るのみに非(あら)ざるなり。而(しか)も竟(つひ)に言(ものい)はず。
 大丈夫妻(だいぢやうふつま)の鄙(いや)しむ所と為らば、安(いづ)くんぞ其の子を 用(もち)ひん、と。乃(すなは)ち 両足(りやうそく)を持(ぢ)し、頭(かしら)を以(もつ)て石上(せきじやう)に撲(う)つ。手に應(おう)じて砕(くだ)け、血は教歩 に濺(そそ)ぐ。子春の愛心(あいこころ)に生じ、忽(たちま)ち其(そ)の約(やく)を忘れ、覚(おぼ)えずして聲 (こゑ) を失(しつ)して云(いは)く、噫(ああ)、と。


 「杜子春傳」を陽子流にアレンジしてみました。原典とは全く違ったフィクションですが、お暇な方は、しばしお付き合いください。書き足りなくて表現の未熟なところは、皆さんの想像力で補ってくださいね。

杜子春回想

 私は、地獄の鬼に曳かれて閻魔大王の前に立たされました。
「今度は何地獄に落とされるのだろうか」
 鬼の行方をぼんやりと追っていました。
 鬼は、閻魔大王さまに書類を渡しながら、
「この者の地獄の刑は全て終わりました」
 と報告しているではないですか、
「ああ、終わったのか。」
 私は、ほっとして閻魔大王さまがゆっくりと書類を繰ってゆくのを眺めていました。
 思い返してみると、地獄の責め苦もつらかったけれど、終わった今となっては全てが夢の中の出来事のように思えました。この身体だって、今は、傷一つ付いていないではありませんか。
 --あの、仙人の言うように、私は間違いなく夢を見ているのだ。全てが幻なんだ。だけど、こんな幻を見せて、一体何のまじないのつもりなのだろうか……。もっとも、私の命は、あの仙人に預けてしまったのだから、今更こんなことを考えても詮ないことなのだけれど……。
 だが、地獄ではいろいろな人がいたものだ。地獄の責めに涙を流して改心を誓っている者もいれば、地獄に来た因縁を他人のせいにしてさらに怨念の炎を大きくしている者、只ただ目の前の責め苦に恐怖している者、百八煩悩の全て見せてもらったようなものだ。そういえば、わたしが、仙人にお金をもらって遊び呆けていたときだってそうだった。金が無くなると掌を返したように人の心も離れていったものだった。所詮は、この世もあの世も夢物語なのか……。--
 「このように陰の気が強い奴は、男に生まれさせるわけにはいかんな!宋州單父県の副長官王勸の娘がいいだろう」
 そのとき、私の心に閻魔大王さまの声が聞こえてきました。それは、耳に聞こえてくる声とではなく、心の奥底から、わき上がってくるような意識の声でした。
 はっとして、顔を上げようとしましたが、その刹那、私の身体は宙に浮き、天井の暗闇に吸い込まれるように上っていきました。と、上っているはずがいつの間にか、真っ逆さまに頭から落ちていき、突然、目の前に光がひろがったのです。

 目の前は、霞がかかったように、やさしいひかりだけが私を包んでいました。
 久しぶりに人の手のぬくもりを身体に感じて、安堵した私は、深く息を吸い込んで吐こうとしたのですが、そのとき、仙人の言葉が浮かび、思わず息を呑み込んでしまいました。
「どんなことがあっても、声を出してはいけない」
 わたしはこのとき初めて、地獄の責め苦よりも安楽の誘惑の方が克ち難いものだと思ったものでした。
「わたしの赤ちゃんはどうしたの、産声が聞こえないわ」
 女の心細げな声がしました。
「大丈夫ですよ。蘭瞳奥様、元気な女の赤ちゃんですよ。でも……」
 私は、女の手に抱かれました。やわらかな、温かい手のぬくもりがわたしの顔を、頭を撫でてゆきます。
 そして、私の顔に滴が落ちてきました。滴は頬を伝い、産着を濡らしてゆきました。

 両親は、私の声が出ないのを悲しみ、あらゆるものにすがりました。医者、薬、呪い祈祷、あらゆる事を試しました。
 赤児の身体ではあらがうことも出来ず、無理やり飲まされた薬のなかには身体に障るものもあったのでしょう。私は、体が弱くあらゆる病気を経験することになりました。時折、元気になって動こうとすると、意識は生まれる前の大人のままですから気持ちに体がついていかず、やけどをしたり寝台から落ちたりと一日として医者や薬の世話にならない日はないくらいでした。
 でも、実はそんなことは地獄の責め苦に比べれば、わたしにとってどうと言うことはなかったのです。本当に辛かったのは、口をきかぬ私を心配していとおしんでくれる母・王蘭瞳のやさしさに応えられない自身の歯がゆさでした。
 赤児に宿る男の魂、自分の過去を自覚できるということは、目の前で起こっていることがまぎれもなく幻だという証拠なのだとわかっていても、それは、地獄の責め苦よりも辛いものでした。
 やさしく、私の身を心配して声をかけてくれる母の言葉になんとか応えたい。この気持ちはいつしか若い母・王蘭瞳への愛に変わっていきました。でも、この愛を完成させる肉体はもはや私には備わっていませんでした。赤児として一方的に受け身の立場で、愛する女・王蘭瞳の世話を受けることは身悶えるほど恥ずかしいことでもありました。羞恥心と口をきけない歯がゆさで流す涙も、王蘭瞳の目には病の苦痛に流す涙に見えたことでしょう。私が涙を流すとき、王蘭瞳は私を抱きしめて一緒に涙を流してくれました。次第に、私はこの母・王蘭瞳に身を預けて任せることの喜びを知るようになっていきました。

 私は、みるみるうちに成長してゆきました。そして、成長するにつれて容姿は、ほんとうに母・王蘭瞳に似てきました。私は、自分のからだが、愛するものの身体に入り込んで同化していくような感覚におそわれるようになっていきました。いつもいつも母に抱きしめてもらって、そのまま母の体の中に溶け込んで一体になってしまいたい。そう考えるたびに悲しくなって、いつも涙を流してばかりいたのです。そして、涙を流している私を見ると、母は赤児の時と同じように私を抱きしめ、頭を撫でながら一緒に泣いてくれるのでした。
 親戚のものの中には、私がまったく喋らないのを訝しがり、母・王蘭瞳が甘やかしすぎているからだと言って、突然脅かしてみたり、蛇や百足を目の前にぶら下げたりして、何とか声を出させようとする者もいました。でも、そんなときは決まって母が事前に知らせてくれて、かばってくれました。おかげで、声を上げないですんだのです。

 年頃になると、周りでは、器量がよいとの評判が立ち始めました。その頃には、私も女の身体になれてきて、時折、仙人の言葉を忘れて声を上げそうになってしまうことさえもありました。人から器量が良いと言われると、自分でも自分のからだがいとおしく誇らしくさえ思えてきていました。
 そんな時、私の事を嫁に貰いたいという男が現れたのです。
 両親は、この娘は唖だからと断るのですが、男は執拗に求婚してきました。
「喋られなくても、そんなことは構わないのです。私が、絶対に幸せにしてあげましょう。お嬢さんみたいな素敵な人は、居るだけで立派な妻になれます。喋らないことも、世の中のお喋り女のいい手本になりますよ」
 立派な仲人を立てて、礼を尽くしてくる男に、父はついに、私を嫁がせることを承諾してしまったのです。

 宋州では、嫁いだ女は二度と生家に戻ることは許されませんでした。身分のある男の妻は自分の部屋から出ることすら出来ませんでした。
 嫁ぐ日の私は、綺麗にお化粧されても、流れ出る涙を止めることは出来ませんでした。母に抱いてもらえるのも、母の顔を見ることさえ今日が最後なのです。
 その日、私の部屋にやって来た母は、私の目をじっと見据えてこう言ったのです。
「杜子春、泣かなくてもいいのですよ。お前はきっとこの世の行を全うできます」
 私は、母の言葉に耳を疑った。
「驚いたでしょうね。でも、黙って私の言うことを聴きなさい。私は、あなたをここに送った仙人に仕える仙女なのです。お前を見守るために、この世に遣わされてきたのですよ。
 お前のようにまだ修行の足りないものは、まったく喋ってはいけないことになっているけれど、行を全うして次に生まれるときには、霊力を得てまた自由に喋れるようになるのです。これからは、お前は女として一人修行してゆかねばならないのですよ。これからが本当のお前の修行です。嫁ぐお前に、この家の女に代々引き継がれてきたお護りを渡します。これからは、この簪を絶対に身体から放してはなりません」
 母・王蘭瞳はそう言って、私の髪に一本の簪を挿してくれました。
--全て分かっていたんだ。分かっていて私を受け入れてくれていたんだ--
 その簪に手を触れると、悲しみに沈んでいた私の心は不思議と穏やかになっていきました。
 婚家の前に着いた私は、先祖廟に礼拝すると、女の汚れた身で屋敷を穢さないように夫に背負われて部屋に入りました。これからは、自分の部屋以外に歩くことは許されないのです。これからの私の命は夫の思いひとつ。七出に触れた女は家を出され、実家に戻ることも許されず、路傍に佇んで自分を受け入れてくれる人をただ待つしかないのです。

 婚礼が終わった次の日、私は夫から母が自ら命を絶ったことを告げられました。
「行の秘密を漏らしたものは、その死をもって償わなければならないのです。でも、私の魂はいつもお前の周りにいて見守っていますからね」
 別れの悲しさに、王蘭瞳の言葉の重さを聞き逃していた自分の愚かさを悔やんでも悔やみきれず、私は、立って歩くことすら出来ませんでした。しかし、夫は、何を思ったのか、そんなかよわげなわたしの姿に満足そうな顔をしていました。

 --この身に男を受け入れなければならないとは--
 おぞましさに身を強ばらせて、私は毎夜、人形のように抱かれていました。
 それでも最初の頃は、いやがるわたしの姿が堪らないと男は満足げだったのです。欲しかったおもちゃを手に入れた子供のようにわたしの身体を貪っては果てていました。そんな姿から私はもっと早く夫の偏執的な心に気付くべきだったのです。

 そうしているうちに、わたしにも子供が出来ました。子は、愛する母に因んで蘭憧と名付けられ、跡継ぎの絶えた実家王家の養子として育てられることになりました。小さいうちは母親のもとでとの、実父の計らいで同じ屋根の下で暮らせることになりましたが、夫は里心が付くからと私から子を引き離したのです。
 しかし、乳母は、そんな私を哀れに思ってか、夫の留守を見計らって私の部屋に蘭憧を連れてきてくれました。
 腕に抱いて、乳をやりながら満足そうな蘭憧の顔を眺め、頭を撫でていると、こんなにも、自分の子供とはいとおしいのもなのかと、幸せをかみしめたものでした。そして、おぼつかない言葉ですり寄ってくる蘭憧に声をかけてやれない自分が、ほんとうに口惜しかったのです。
「これが、本当に幻なの。蘭憧、お前は誰の魂をうけてきたの。今となっては、私の愛はお前だけのものなのよ」
 心の中で語りかける私に、蘭憧はいつも微笑み返してくれるのでした。
 蘭憧といる時だけが、私の安らぎの時になっていきました。

「賈大夫の故事にもあるように、世の中の女で夫の才能を見て心を開かない女などいないのだ。子を見て笑いかけるのに、夫を見て心を開かないとはどういうことだ。」
子供をあやす私を見つけた夫は、私の腕から子供を取り上げ、私の髪を掴んで振り回しました。
「私は知っているんだぞ。おまえは身体が悪くて声が出ないのではない。お前は私を嫌って声を出さないのだ。それほどまでに私を嫌うのはどうしてなのだ。さあ、言ってみろ」
 私の髪から落ちた簪を拾い上げると、子供の両足を持ち逆さにぶら下げ、子の喉元に簪をあてがったのです。
 そう言われることは、夫を拒み続けてきた私の因縁であることは間違いないことなのだとしても、夫にしても愛するわが子に、このような仕打ちをするとはどうしたことか……。
 私は、睨み返していました。
 夫は、私のその目を見た途端、簪を子の喉元に突き刺し、手を離したのです。
 蘭憧の頭は床の石畳に叩きつけられ、鮮血が飛び散りました。
 私は、思わず血にまみれた子供の身体にすがり、声を上げて泣いたのです。
「ああ……」

 わたしは、気が付くと仙人の館に座っていました。この館に来たときに飲んだ薬の紙包みがそのままに目の前に落ち、湯飲みからはまだそのままに湯気が上がっていました。
 「後一息で不老長寿の薬が完成して、お前も仙人に成れるところだったのだ。わしの見込み違いだったようだ。お前には仙人になる素質はないようだ」
 仙人はそう言うと、わたしを里の村へ送り返してしまいました。
 村も出てきたときと同じように何も変わっていませんでした。
 そこには、またもとのままの貧乏な生活だけが待っていました。
 しばらくして、私は気を取り直してもう一度仙人の館を訪ねてみようと考えました。けして、仙人になりたいと思ったわけではありません。もう一度だけ、もう一目だけでも、母として我が子蘭憧に逢いたかったのです。
 わたしは、仙人の館を目指しました。しかし、いくら探し歩いても仙人の館は二度と見つかりませんでした。

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