(鴇色)

図解 性転換マニュアル

性の問題研究会 同文書院(2000)

 性同一性障害者に対する性転換手術は、あくまでも生物学的性別にしたがって社会上の身分を規定しようとする現在の社会制度を正義として成り立つ考え方です。生物学的性別に捕らわれることなく、自分の社会的性を選択できれば、自分の身体を傷つけることなどしなくても良いような気がします。社会体制を維持するために体の方をあわせて改造しなければならないなんて、何か変ではないでしょうか。性同一性障害者とか病気として扱われること自体が不自然なことのように思います。
 社会的制約の中で自分のプライバシーを犯されながら嫌な思いをして生きている性同一性障害者の方にとっては、埼玉医科大学の性転換治療は素晴らしいニュースだったと思いますが、理屈だけで言うと性的少数派が身体的な犠牲を払うことを押し付けられているような気もするのです。このような本を読むたび「男らしさ」「女らしさ」というはっきりした定義も出来ないステレオタイプに押し込められている(自分で自分を押し込んでいるところも多分にありますが)息苦しさを感じてしまうのは私だけなんでしょうか。「男」と「女」に本当は境界線なんて引けないのです。生物学的な「男」と「女」の境界も引くことが出来ないということも耳にしたことがあります。「男」と「女」は言葉のようにデジタルな区分で割り切れるものでなくて、もっとアナログ的なものであるし、また、それぞれの要素によっても「男っぽかったり」「女っぽかったり」異っていて同じ一人の中に混在するものなのです。
 体の性と社会的性役割のギャップだけが問題であるなら、得体のしれない「男らしさ」「女らしさ」のステレオタイプこそ変えていくべきででしょう。しかし、これは男、女の性役割のない世界や第三の性を実現することではありません。私には、ペニスやヴァギナの有無だけで人格や身分を規定する制度自体への疑問であり、反感なのです。
 理屈の上でというのは、「男らしさ」「女らしさ」のなかに、身体的特徴が重要なファクターとなっているからです。実際には、心の性、社会的性だけと思って追い求めても体の性的特徴がついて回るのです。そこには、「男らしさ」「女らしさ」のステレオタイプにどっぷりと浸かり込んでいる自分がいるのですが、簡単に言えば、女性として暮らすならばやはり奇麗になりたいし、女性的な体つきになって女性としてみられたいと思ってしまうということです。

 

普通女性

普通男性

性同一性障害者
FTMTS
女→男

性同一性障害者
MTFTS

男→女

ゲイ

レズビアン

体の性

生物学的性

XX
(女性)

XY
(男性)

XX
(女性)

XY
(男性)

XY
(男性)

XX
(女性)

心の性

性自認

性指向


(異性愛)


(異性愛)


(異性愛)


(異性愛)


(同性愛)


(同性愛)

性役割

 上の表は、この本に掲載されていたものです。それぞれの性の要素を「男」と「女」に二分節してしか捉えていないことは目をつむるとして、この表に出てこない組み合わせの人はホントに救われないというか、まだ、認知もされていないのかと思ってしまいました。もちろんこの本のテーマではないから省いたのかもしれませんが……。
 私の場合は、ハーフタイムのアマチュアのTVですが、表の表現で言えば、{体の性:XY、性自認:男、性指向:女、性役割:女}を目指しているように思います。気持としては、「普通男性」と「レズビアン」の間を行ったり来たりですが、性自認としては男の意識の方が勝っています。だからこそわたしの場合、女装が成り立つのです。女性にも装う楽しみはあると思いますが、女性が女装するのはあたりまえのことです。性自認と性役割の落差を楽しんでいる私こそ、本当のビョーキなのかもしれませんね。

この本に書かれていた用語の定義を参考に引用しておきます。

Transgender(TG) トランスジェンダー
社会的・文化的な性別の枠を越えて生きる人々のことを言う。トランスセクシャルをふくむ。「ニューハーフ」は異性から女性へ性転換(していない人もいるが)して、水商売をンている人を指すが、トランスジェンダーは男女に関係なく、ジェンダーを越えるえる生き方をしている人を意味する。

Transsexual(TS)トランスセクシャル
心の性(ジェンダー)と体の性(セックス)の違和感に苦しみ、心の性に体の性をあわせようとする人のこと。外料手術によって性転換手術をした人、しようとしている人の両方を意味する。

Transevestite(TV)トランスベスタイト
強い衝動にかられて反村の性の服装、異性装をする人のこと。クロスドレッサーとも言う。日常のすべてを異性装する人は希で、ほとんどはパートタイムで異性装をする。女性が男装することよりも、男性が女装するほうが社会からの蔑視を受けやすい。

Intersexual(IS)インターセクシャル
半陰陽とも言う。外性器(ペニス、ヴァギナ)の形、性染色体、性腺などによって、男女の性別がはっきりと分けられない中間性の人たち。

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